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灘の下り酒物語From KOBE【灘五郷】!大手酒蔵の凄みを感じられる大満足のイベントでした

2023年10月29日、神戸ハーバーランドの高浜海岸にて、「灘の下り酒物語」というイベントが開催されました。

江戸時代、上方である関西から江戸へと「下る」お酒を下り酒と呼び重宝されていたそう。

現代でも使う「くだらない」という言葉は、「江戸へと下らない=美味しくないお酒」に由来しているといい、その影響力の高さが伺えます。

本イベントでは灘の酒の有料試飲会と現代版樽廻船の出発式、さらには「灘の酒造り唄」の披露など、日本酒の歴史や文化に触れられるコンテンツが盛りだくさん。

本記事では当日の様子や灘のお酒の魅力をお伝えします!

日本一の日本酒醸造地

灘の日本酒の歴史は古く、伝承としては1300年代にまで遡るそう。

江戸時代の初期には、現在の大阪池田や伊丹地域一体が、日本酒の醸造地として栄えることになりました。

江戸時代の中期以降、六甲山からの急流を利用した精米、そして優れた仕込み水、海運での輸送といった利点から多くの酒蔵が灘へと移っていったのです。

剣菱のラベルには今も「丹醸(たんじょう)」と書かれており、これは伊丹で造っていた歴史を表しています。

今回のイベントは江戸時代、首都である江戸へと灘の日本酒を運ぶために使っていた「樽廻船(たるかいせん)」を現代に再現しようという試み。

イベントでは江戸時代のように馬が樽酒を引いて登場し、船の積み込みまでを行っていました。

イベントでは1つの樽だけですが、当時は相当な数の酒樽を運んでいたのでしょう。

こういった光景を目の当たりにすると、当時の状況がイメージしやすくなりますね。

馬が引いてきた酒樽は人の手によって降ろされ、いよいよ船に積み込まれます。

この馬は非常に大人しく、人混みの中にいても落ち着いている様子が印象的でした。

酒樽は当然ですが重たいので、積込みは機械によって行われます。

江戸時代はこういった作業も人力だったと考えると、凄まじいですね。

色々な方々の挨拶が終わり、いよいよ出発式!

天気にも恵まれ、非常に良い出発になったのではないでしょうか。

江戸時代、灘から到着した下り酒は多くの江戸っ子に楽しまれていたそう。

特に「神田鎌倉河岸」と呼ばれる地域では、数々の下り酒が取り扱われていました。

そうした中、東京に存在する豊島屋酒造が当時、試飲の「おつまみ」として豆腐田楽を提供。

酒屋に居座りながら飲み食いするということが、現在の「居酒屋」のルーツともいわれているのです。

灘から江戸へと向かう日本酒が、日本文化を形成したと考えるとますます興味深いです。

豊島屋酒造については、以下の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。

樽廻船の再現ということで、勝手に木製の船をイメージしていましたが、さすがにヨットでした。

しかし、風力のみを頼りに1週間かけて東京に向かうとは、ロマンある試みです。

神戸タワー、神戸メリケンパークオリエンタルホテルと、神戸を代表する光景を背に出発。

東京への到着は11月5日ということで、無事を祈っています。

魅力的な催しが盛りだくさん

イベントでは樽廻船の出発式だけではなく、色々な催し物がありましたので一部を紹介します。

剣菱による木製暖器の製造

全国的にも有名な「剣菱」。

大手のイメージが強い酒蔵かもしれませんが、実は酒造りに使う道具は木製、さらに手作りという徹底したこだわりを持っています。

こちらでは酒母の温度管理に使用する「暖器」の製造を行っていました。

木製の道具を作れる職人は年々減っていることから、剣菱では自社内で職人を育てているそう。

中々見る光景ではないので、非常にいい経験をしました。

灘の酒蔵 合同 酒造り唄 合唱

昔、お酒造りの現場では作業時間を調整するために「歌」が利用されていたそう。

歌いながら作業することで、工程ごとの時間を一定にする目的があったのだと思われます。

蔵によって歌いまわし、リズムが異なるようですが、今回は「灘五郷」による合同の酒造り唄の合唱が!

おそらく史上初ということで、このイベントに向けて何度も打ち合わせを重ねたそう。

民謡のような雰囲気で、初めて聞いたはずですがどこか聞き馴染みのある、懐かしさを感じるような歌でした。

日本酒学のトークショー

大学教授による灘のお酒の歴史に関するトークショーも。

イベント後半ということで、皆さん楽しみながら聞いていました。

教授の方も飲みながら楽しく話している雰囲気が印象的。

日本酒は嗜好品でありながらもその背景には深い歴史、文化があることを改めて理解できます。

有料試飲も圧巻の品揃え

兵庫県は日本酒生産量で全国1位。

さらに、全国で生産される酒米の約25%も生産している、まさに日本酒の県。

酒米の王者とも称される「山田錦」も誕生しているなど、兵庫県と日本酒は切っても切れない関係なのです。

そのため、全国的にも有名な銘柄が多く、いわゆる大手の蔵が集まっている地域でもあります。

今回の試飲会はチケット1枚100円という破格で、それぞれの銘柄が試飲できました。

こちらでは気になったものを中心に記載します。

剣菱の瑞祥がなんと300円で!四合瓶で3,000円前後する銘柄なので、かなりお得に飲めました。

5年以上熟成さえた古酒のみをブレンドした銘柄であり、カラメルやはちみつのような甘やかさ、とろっとした口当たりが非常に上品。

量も40〜60ml程度は入っていたかと思われ、非常にリーズナブル。

見た限りではチケット3枚が最も高価な試飲で、基本1枚で飲めました。

沢の鶴の「きもとさん」。

これからの季節にピッタリのお燗向きなふくよかな味わい。

お鍋とかと合わせたいですね。

灘は「男酒」と呼ばれるように、辛口でしっかりした味わいが特徴的。

しかし、菊正宗の「セセシオン」はそういった灘のイメージを覆すジューシーかつフルーティータイプ。

おそらく、これを白ワインだと言って提供された場合、日本酒だと気がつける人は僅かでしょう。

日本酒とワイン酵母のハイブリッドである「CRU2酵母」を使用しているため、みずみずしいフレッシュな味わいが再現できたそう。

価格はなんと500mlで800円未満!大手の技術力、生産力を存分に堪能できる銘柄です。

ワンカップのイメージが強い大関からは、まるでクラフト酒のような商品も販売されていました。

醪ではなく、絞った直後の清酒に果汁を加えているようで、分類としてはリキュールになるそう。

トレンドもバッチリ抑えており、さすがだなという印象。

灘酒に絞った飲み会を開催したとしても、幅広い味わいを楽しめそうです。

灘=辛口というイメージは過去のものになりつつあるのかもしれません。

歴史ある灘五郷のお酒をもっと楽しもう!

近年は日本酒ブームを追い風に、年代を問わず日本酒を常飲している様子がSNSなどで伺えます。

しかし、その多くが新進気鋭の若手蔵の銘柄であることが多いのではないでしょうか。

灘にもそういった新しい蔵、銘柄に負けずとも劣らない、魅力的な商品が数多く存在していました。

わたし自身も知らない商品が多く、まだまだ勉強しないとなと実感。

大手の商品はどこでも手に入りやすいことから、どちらかといえば軽視される傾向にある気がします。

以前東京で参加した「若手の夜明け」はイベントコンセプトもあってか、参加者の多くが若年層で驚きました。

一方、今回の「灘下り酒物語」は、わたしが見た限りでは年配の方々が目立つ印象。

どういう訳か海外観光客もそこまで多くないように見受けられました。

そういう意味ではまだまだ今後伸び代があるといえるかもしれません。

兵庫県は日本酒生産量ナンバー1。つまり世界一の日本酒産地ともいえます。

今後SAKEの魅力を世界に発信していくためには、灘五郷の力が欠かせないといえるでしょう。

お酒の味わいと一緒に、灘が日本酒文化に残した影響力も感じながら、ぜひ色々な銘柄を楽しんでみてください!